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伊吹島取材
讃岐うどんの本場、香川県の西部に位置する観音寺市に属し、観音寺港より西の沖合い10kmの瀬戸内海上にあります。 島はとても小さく周囲は5.4kmほどで人口は1,000人弱といわれています。
豊かな漁業資源に恵まれ、いわし漁を背景とするいりこの生産で島は潤っています。漁期は6月から9月のはじめごろまでで、 住民の半数がイリコ作りに関わっているそうです。ここで取れた上質のいりこは煮干の最高級とされ現在でも数多くのうどん店で使用されています。
今年も6月からいりこ漁が始まり、最初のうちは品質の良いいわしが大漁だったのですが 途中から加工に向くいわしが少なくなり、漁を中断したり、休む日もあり漁獲高が例年より少ないとのことでした。
いわしの漁はバッチ網漁という漁の仕方をします。 バッチ網の名前は、二隻の漁船によって引っ張る網の形がモモ引き(バッチ)の形に似ているところから由来するそうです。
バッチ網漁は、網を引っ張る二隻の漁船とジャッカーと呼ばれる運搬船の三隻がチームで行います。 二艘の船が平行に走行しその間に網を仕掛け、船と船の間にいる魚群をバッチ網ですくいます。
そこに氷を満載したジャッカー(運搬船)が横付けしタモという大きな網で何回も掬い上げ氷の浴槽へ移します。
一つ一つの作業が熟練された匠の技なのですが、なかでもジャッカー(運搬船)は知識と勘が特に必要で、 経験を豊富に積んだ漁師が担当するそうです。
いわしを満載にしたジャッカー(運搬船)は全速力で港に帰港しフィッシュポンプ(魚をそのまま吸い上げるポンプ)を使い、 イワシを加工場まで直接送ります。
加工場に送られたいわしは、短時間の内にある程度選別され、せいろの上に並べ大釜にさっとくぐらせすぐに台車に乗せ 大型の乾燥機に入れ、冷風と熱風で乾燥された後、選別・箱詰めし全国へ出荷されます。
伊吹島周辺の漁場は水深が20~30メートルと浅く、海の流れも緩やかなため、いわしの骨や身がやわらかいといわれています。
そんな地の利に初めから恵まれていても、それだけでは一流ブランドの「いりこ」にはなりません。
先人達は最高の「いりこ」に加工するために何度も失敗し、何度も工夫をかさね たそうです。
積極的な技術革新や品質意識の改善、先人たちの知恵、技術の伝承、そして一番大切なものは、良い物を常に作りたいという熱意です。
この島ではいわし漁から加工までを、網元が一貫して行い、いわしを新鮮なまま加工しています。こうして伊吹島では”最高級のいりこ作り”に成功したそうです。